焦点:ビンラディン容疑者の殺害、残される適法性の議論( ロイター)

焦点:ビンラディン容疑者の殺害、残される適法性の議論
ロイター 5月6日(金)16時45分配信

 [ニューヨーク 5日 ロイター] 米海軍特殊部隊によるアルカイダ指導者ウサマ・ビンラディン容疑者の殺害について、オバマ政権は適法だったと主張するが、米国の国際法の専門家たちは、法律上の重要な問題が残されていると指摘する。

 2001年9月11日の米同時多発攻撃を受け、米議会は大統領に「武力行使容認決議」などテロ対策で幅広い権限を与えたが、一部専門家の間からは、ビンラディン容疑者の殺害作戦は国際法上の適法性が不明確だとの声が出ている。

 米政権がブッシュ時代から最重要指名手配者としていたビンラディン容疑者の殺害を受け、米国内ではオバマ大統領の支持率が急上昇したが、国際社会では今回の米国の行動は行き過ぎではないかとの懸念も浮上している。

 ミシガン大学ロースクールのスティーブン・ラトナー教授は「法律問題としては難問だ。多くの問題は、ウサマ・ビンラディンが交戦相手の戦闘員なのか、大量殺人の容疑者なのか、どちらと考えるかにかかっている」と述べた。

 オバマ政権が主張するように、米政府がアルカイダと戦争状態にあるという理屈なら、ビンラディン容疑者の殺害は合法だと言えるだろう。

 ラトナー教授は「ビンラディン容疑者が銃を持っていたかどうかは問題ではない。戦闘員の殺害は法律的に認められている」と語る。

 <司法長官は合法性を主張>

 エリック・ホルダー米司法長官は4日の上院公聴会で、「ビンラディン容疑者は9・11の実行組織であるアルカイダの指導者」であり、殺害作戦は合法だったと証言。「戦場で敵司令官を標的にすることは合法だ。第2次世界大戦中に行った山本(五十六の殺害)も同じだ」とも述べた。

 カーニー米大統領報道官は3日、米海軍特殊部隊がビンラディン容疑者の邸宅を急襲した際、同容疑者は抵抗したが、武器は持っていなかったことを明らかにしている。

 これについてもホルダー長官は、たとえビンラディン容疑者が降伏の意思を見せたとしても、「自衛のためや邸宅内のほかの人の保護のため、海軍特殊部隊の行動には十分な根拠がある」との見解を示した。

 アルベルト・ゴンザレス前司法長官も、ロイターの取材に「ビンラディン容疑者は軍事目標だった。われわれは紛争中だったという点に疑問はない。何を議論しているか私には分からない」と述べ、作戦の合法性を訴えている。

 <複雑な構図>

 さらにゴンザレス前司法長官も、ビンラディン容疑者が武装していたかどうかは問題ではないと一蹴。「ミサイルを発射したとしよう。ターゲットが武装していたかどうか、われわれは問題にするだろうか」と語った。

 一方、ラトナー教授は、ビンラディン容疑者が大量殺人の容疑者だとみなされる場合、米軍の作戦に関する法的解釈は違ったストーリーになってくると指摘。「その枠組み内での行動なら、殺害は容疑者が差し迫った脅威を示した場合にのみ許される」としている。

 問題を複雑にしているのは、ビンラディン容疑者が1998年、米大使館爆破事件を共謀したとして、マンハッタン連邦地裁に起訴されたこと。こう語るのは、ノースウェスタン大ロースクールの国際人権センターで所長を務めるデビッド・シェファー氏。「通常は起訴されている個人を捕えるのは、裁きを受けさせるため法廷に連れて行くのが目的。起訴中であるなら、文字通り即座に処刑するのは目的ではない」と指摘する。

 作戦を実行した海軍特殊部隊にどういった命令が出されていたのか、ビンラディン容疑者が降伏のためどういう行動をとったかなど、作戦には重要な問題が残されているという点でラトナー教授とシェファー所長の意見は一致している。

 シェファー所長は、海軍特殊部隊が身柄拘束ではなく殺害を命じられていたのであれば、国際法上は問題ないとしても、米国の理想には反するのではないかとの疑問を提起。「米国社会の特徴として、少なくとも交戦規則に沿って拘束を命じるのが、米国の価値観にはよりふさわしかったのではないか」と語っている。

(ロイター日本語ニュース 執筆:Andrew Longstreth記者、翻訳:宮井伸明、編集:野村宏之)





ビンラディン容疑者殺害作戦、米特殊部隊は丸腰の3人を射殺か
ロイター 5月6日(金)12時53分配信

 [ワシントン 5日 ロイター] 米海軍特殊部隊によるアルカイダ指導者、ウサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦で、同容疑者を含め死亡した4人のうち、銃で応戦したのは1人だけだったことが分かった。米政府の情報に詳しい関係筋が5日、ロイターに明らかにした。

 この関係筋の説明によると、パキスタン首都近郊アボタバードの同容疑者宅で繰り広げられた40分に及ぶ作戦で、特殊部隊は武装していたと判断した住民1人に対しても発砲したが、実際には武器を所持していなかったとみられる。

 ビンラディン容疑者の様子について、同関係筋と別の関係筋は、先にカーニー米大統領報道官が説明した通り、射殺された際は武器を持っておらず、特殊部隊に直接危害を与えるような姿勢は示さなかったと述べた。

 関係筋の情報や米政府の発表を基に、殺害作戦の一部始終を時系列でまとめた。

 特殊部隊は1日夜、ビンラディン容疑者の居住施設にあった2棟の建物のうちの離れに侵入。部隊はそこで銃撃に遭いながら、建物内に入り男1人を射殺した。

 この男は後に、アルカイダの使者アブ・アフメド・アルクウェイティ氏と判明。同氏は、米中央情報局(CIA)をはじめ、米情報機関の捜査対象にされ、同氏を追跡したことによってビンラディン容疑者の所在の特定に至ったとされている。

 アルクウェイティ氏殺害後、部隊は3階建ての母屋に移動。建物内に侵入すると、手を後ろに回していた男を発見し、背後に武器を隠している可能性があるとみて、男を射殺した。

 この男はアルクウェイティ氏の兄弟で、アルカイダの使者とみられている。射殺された際、実際には武器を手にしていなかったが、部隊が近くで武器を見つけたという。

 2人目の男を射殺後、部隊が階段を上り始めたところ、別の男が階段を駆け下り、隊員に襲いかかった。この男も射殺されたが、米政府当局者はビンラディン容疑者の息子とみている。

 その後、部隊は階段を上に進み、ドア越しかバルコニー越しに顔を突き出すビンラディン容疑者とみられる男を発見。部隊は男に対し銃で少なくとも1発撃ち、男は元いた部屋に下がっていった。

 部隊は3階に到着し、男が戻った部屋に侵入しようとしたところ、女が隊員に飛び掛かった。ビンラディン容疑者の妻とされるこの女は、部隊に脚を撃たれ部屋の脇に寄せられた。

 この際、同容疑者が実際に取った行動、部隊が侵入してきたことや妻が撃たれたことに対する同容疑者の反応については明らかになっていない。ただ、政府の見解に詳しい関係筋によると、部隊は同容疑者の反応をほとんど待たず、即座に射殺したという。
--------------------【引用おわり】--------------------



【ブログ内関連記事】
●<ビンラディン容疑者殺害>残るいくつかの「謎」を検証 (毎日新聞)
http://sociologio.at.webry.info/201105/article_19.html
●「ビンラディン殺害「2つの疑問」とは?」(プリンストン発 新潮流アメリカ by 冷泉彰彦)
http://sociologio.at.webry.info/201105/article_18.html
●余録:ビンラディン、10年後の死(毎日)ほか
http://sociologio.at.webry.info/201105/article_9.html

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ましこ
2011年05月15日 06:41
ビンラーディン殺害は主権侵害…パキスタン議会
読売新聞 5月14日(土)19時13分配信
 【イスラマバード=横堀裕也】パキスタン議会は14日未明、国際テロ組織アル・カーイダ指導者のウサマ・ビンラーディンをパキスタン領内で殺害した米軍の作戦を「主権侵害であり、容認できない」とする非難決議を採択した。

 決議は、パキスタン政府にも、対米関係を「国益が保証されるもの」とするよう、見直しを求めている。

 13日からの徹夜審議の末採択された決議は、ビンラーディン殺害のほか、米国がテロ組織掃討の一環としてパキスタン領内で行っている無人機による攻撃についても、「直ちに中止しなければ、北大西洋条約機構(NATO)軍の域内通行禁止も検討せざるを得ない」とけん制した。アフガニスタンで展開するNATO軍は、補給物資の約7割をパキスタン経由の陸上輸送に頼っているとされる。
ましこ
2011年05月15日 06:43
米殺害作戦は「主権侵害」=無人機攻撃の停止要求―パキスタン議会
時事通信 5月14日(土)19時49分配信
 【ニューデリー時事】パキスタン上下両院は14日、北部のアボタバードで国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者を殺害した米国の軍事作戦について、一方的な行動で「主権侵害」に該当し、「パキスタン国民は今後、一切容認できない」などと厳しく非難する決議を全会一致で採択した。
 決議はまた、北西部で続く米無人機の対武装勢力ミサイル攻撃に言及し、「国連憲章や国際法に違反しており、即時停止すべきだ」と要求。「もしできなければ、政府は(アフガニスタンへの人員・物資輸送のために)北大西洋条約機構(NATO)軍が使っている国内施設の提供停止など必要な手段を取ることも考慮する」と警告した。 
ましこ
2011年05月15日 06:45
<ビンラディン容疑者殺害>「放置」批判に反論…パキスタン
毎日新聞 5月14日(土)20時54分配信
 【ニューデリー杉尾直哉】米軍による国際テロ組織アルカイダの最高指導者ウサマ・ビンラディン容疑者殺害作戦について、パキスタン軍に説明を求める同国議会の公聴会が13日開かれた。証言に立った軍情報機関(ISI)のパシャ長官は「(ビンラディン容疑者)殺害前に、我々はすでにアルカイダを無力化していた」と述べ、同容疑者を野放しにしていたとの批判に反論した。

 公聴会は、米軍特殊部隊のヘリ侵入を見逃したことなどで軍への批判が高まる中、非公開で開かれた。軍トップのキヤニ陸軍参謀長も出席し、パシャ長官ら幹部らによる証言や質疑のやり取りの一部をアワン情報放送相が終了後に明らかにした。

 それによると、パシャ長官は、首都近郊の軍駐屯地アボタバードにビンラディン容疑者が潜伏していたことについて「ISIに怠慢や失敗があったとすれば結果を引き受ける」と、引責辞任も辞さない姿勢を見せる一方、「(潜伏を見逃した)地方政府、警察、関連機関すべての失敗だ」と述べた。さらに、「(軍批判は)国益に反し、敵を利するだけだ」と主張し、軍を批判する政治家らを敵視する姿勢を示した。

 殺害当日、米軍ヘリの飛来を見逃した問題については「ステルス機能を持ち、レーダーで探知できなかったため」と弁明した。このため、パキスタンが保有する核兵器が米軍やテロリストに掌握されるのではないかとの懸念も国民から出ているが、パシャ長官は「全国に散らばる我々の『戦略的資産』(核兵器)は、高感度の近代的防犯システムに守られている」と反論した。パキスタンは核弾頭約100個を保有しているといわれている。
ましこ
2011年08月10日 21:48
アフガンでヘリ墜落 精鋭の米海軍特殊部隊員も多数犠牲 米国に衝撃
産経新聞 8月7日(日)18時43分配信
 【ワシントン=佐々木類】アフガニスタン中部ワルダク州で起きた北大西洋条約機構(NATO)軍のヘリコプター墜落で、38人の犠牲者の中に、国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者を殺害したことで知られる米海軍特殊部隊シールズ(SEALS)隊員が含まれていたことが分かった。米メディアが伝えた。米軍の撤退が進む中、治安安定化の成否を握るとされる精鋭部隊の犠牲に米政府は衝撃を受けている。

 米メディアによると、ヘリはイスラム原理主義勢力タリバンとの交戦中に墜落したとみられ、タリバンはヘリを撃墜したと主張。AP通信は米政府高官もヘリが撃墜されたとの見方を示したと報じた。

 米紙によると、死亡した米軍部隊員は30人で、このうち22人がシールズに所属していた。死者の中にビンラーディン容疑者急襲に関与した隊員はいなかったもようだ。

 オバマ大統領は「犠牲者の家族や最愛の人々に祈りをささげる。彼らの死は米軍が払った犠牲の象徴である」と哀悼の意を示す声明を発表。パネッタ国防長官、マレン統合参謀本部議長、デーリー大統領首席補佐官らと電話会議を行い、情報収集を行うとともに対応策を検討した。

 駐留米軍は路上爆弾などのリスクを避けるために移動手段を空輸に頼っており、空輸の主力となっていた今回のヘリ墜落で米国はタリバンが勢いづくことを警戒している。

 マレン議長は「戦いは続いており、計画は遂行しなければならない」と強調。

情報機関と特殊部隊が中心となる今後の対テロ戦略を踏まえ、別の米政府高官も「シールズのメンバーを多数失ったのは非常につらいが、戦略に影響はない。今後も掃討作戦を続けるだけだ」と語った。

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