円高:町工場タイへ 「生き残れぬ」 /パナソニック:調達、物流の両本部 シンガポールに (毎日)

円高:町工場タイへ 「生き残れぬ」 産業空洞化の懸念も
毎日
 2011年9月14日 15時0分

画像 戦後最高値圏で推移する歴史的な円高を背景に、中小企業の間でも東南アジアなど海外に生産を移転する動きが広がり始めた。納入先の大企業などからコスト削減が求められる中、「国内生産にこだわっていては生き残れない」と判断しているためだ。約4000の中小企業が並ぶ国内有数のモノづくり集積地、東京都大田区では、今年に入って18社の町工場がタイ進出を検討、うち4社は来夏までに現地操業を始める計画だ。【永井大介】

 海外移転を検討する中小企業の中には精密部品の製造などで高い技術を持った町工場も多い。大企業に加え、有力中小企業の海外移転まで加速すれば、雇用や技術流出など産業の空洞化懸念が一段と高まりそうだ。

 大田区では公益法人「大田区産業振興協会」が06年から、「研究開発などの本社機能を大田区に残す」ことを条件に、地元の中小企業に対して、タイの首都バンコクに近い「アマタナコン工業地帯」への進出を支援している。同協会が現地での当局への登録や税制優遇措置などの取得手続きを代行、円滑な工場操業を後押しする。

 06年から昨年までにタイに進出した企業は6社にとどまっていたが、急激な円高を受けて、今年はすでに18社が進出を検討。うち4社は来夏までに現地操業を開始する計画だ。従業員が30人に満たない町工場もあるが、原子力発電所に使う部品の製造など高い技術力を持つところが大半だ。同協会の上原正樹海外事業担当リーダーは「政府が十分な円高対策をとらなければ、技術力のある町工場ほど海外移転に向かうだろう」と話す。

 実際、大田区などの有力中小企業に対しては、タイだけでなく、中国や韓国、ベトナムなどの新興国が大胆な税制優遇措置や電力料金免除などを提案し、国ぐるみの工場誘致活動を活発化させており、急激な円高は誘致の追い風となっている。経済産業省が大企業製造業と中小企業計約150社を対象に8月に行った円高に関する緊急調査では、現行水準(1ドル=76円台)の円高が半年以上続いた場合、大企業製造業で46%、中小企業でも17%が「工場や研究開発拠点を海外に移転する」と回答した。

 中小企業の間では、以前から取引先の大手メーカーの海外進出に伴い生産拠点を移す動きはあったが、今回は事情が違う。大田区の金属加工会社の経営者は「円高で輸出市場が縮小する中、日本で生産していても生き残れない」と切実だ。

 ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次主任研究員は「歴史的な円高で、中小企業も従来のように国の政策頼みで『何もしない』というわけにはいかなくなっている。政府も国内に残る企業の保護策一辺倒から、企業が海外で稼いだカネを国内にどう還流させるかを考える時期だ」と指摘する。







パナソニック:調達、物流の両本部 シンガポールに移転へ

 パナソニックは14日、調達、物流の両本部を12年4月にもシンガポールに移すと発表した。アジアで安価な部材調達を加速するとともに、円高に対してドルでの調達を増やす。また、世界の取引先企業を1万7000~1万8000社(10年度)から12年度までに約1万社へと約4割減らすなどの調達改革を進め、年約600億円のコスト削減を狙う。日本企業の本社機能の海外移転は異例。取引先企業の削減は、国内の下請け企業に大きな影響を及ぼす可能性が高い。

 部材の購買は利益に直結するため、調達部門は本社機能の重要な位置を占める。専門家は「調達部門を海外に移すのは珍しい。今後、電機以外の業種も含めて追随する動きが出る可能性が高い」(りそな総合研究所の荒木秀之主任研究員)と、企業の“日本脱出”の前触れと指摘する。

 パナソニックは世界に約250カ所ある生産拠点のうち約100カ所が日本以外のアジアに展開。調達部門をシフトすることで、調達から生産までを一貫させ、アジアに比重を移す。シンガポールを選んだのは、インドや東南アジアへの物流が急激に増えると見込まれるため。海外調達の比率は09年度の43%から12年度は60%に高める。アジアからの調達も33%から50%に増やす。太陽電池パネルなど先端技術関連の調達部門は日本に残す。

 これまでは、各生産拠点が個別に部品を調達していた。今後は特殊な技術が不要な部材などについては、シンガポールの調達本部が各拠点の調達情報をまとめて発注し、購入価格を最も安く抑える。調達した部材は外部委託先にも供給する。委託先への物流も担当することで、外部委託先のコスト構造を把握し、納入価格の一層の低減を求める。【宇都宮裕一】

毎日新聞 2011年9月14日 21時40分





【海外流出擁護論(日経BP)】

空洞化は本当に悪なのか
http://business.nikkeibp.co.jp/article/nb100/20110901/222386/
山川 龍雄 バックナンバー2011年9月5日(月)

 ガランチード――。ブラジルで日系人社会の取材をした時に、しばしばこの言葉を耳にしました。英語のguaranteeと同じ語源で、「保証」「信頼できる人」を意味します。移民船第1号「笠戸丸」の出航から100年余り。日系人たちは苦難を乗り越え、ブラジルの農業・工業技術の発展に貢献をしてきました。戦前の移民には奴隷同然の扱いを受けた人が多く、お金を稼ぐどころか、借金が膨らむ人が続出しました。日本人は責任感が強く、その分、自殺者も多かったと聞きます。口べただけど、人を裏切らない。約束は守る。そんな人柄がこの言葉を生み出したのでしょう。その後、「日本人への信頼」という財産は、同国に進出する日本企業にとって、後押しとなってきました。

 震災や円高進行を受けて、空洞化論議が熱を帯びています。こんな時に企業経営者が積極的な海外シフトの方針を打ち出せば、「国を捨てる」かのように言われる風潮があります。しかし、本当にそうでしょうか。震災後、多くの国から支援の申し出がありました。彼らが日頃、見ている日本人は、国内に住んでいる人ではなく、現地にいる人たちです。つまり海外に飛び出していった人たちが、「日本ブランド」を向上させ、巡り巡って、日本の復興支援に一役買ったと見ることもできます。

 そう考えれば、空洞化を悪と決めつけるわけにはいきません。日本の経営者はもっと「海外展開で成長することが、国のためになる」と堂々と言ってよいと思います。戦前のブラジル移民は、言わば海外への“出稼ぎ”の先駆者。特集では現代版の出稼ぎの効用について考えてみました。

日経ビジネス 2011年9月5日号より



●“出稼ぎ”のススメ 空洞化が日本を潤す| nikkei BPnet 〈日経BPネット〉
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110905/282872/
2011年09月05日 

 一時、1ドル=75円台をつけるという超円高で、企業からは「もう日本ではモノ作りができない」という悲鳴にも似た声が上がっています。発足したばかりの野田佳彦政権に対しても、「円高対策」「空洞化対策」を求める声が、経済界を中心に大きくなってきました。

 企業からすれば、当然の要求でしょう。円高で輸出競争力がなくなれば、日本でモノを作っても稼げないし、雇用も守れないからです。

 しかし、です。ここで今一度、空洞化という現象を深く考えてみる必要はないでしょうか。

 1985年のプラザ合意以降、円は上昇する一方でした。企業はそうした円高に対抗するために、コストを削り、技術を磨き、何とかここまでは踏ん張ってきました。もうこれ以上は無理ならば、空洞化は避けることのできないこととして、捉え直す必要があるのではないでしょうか。

 そこで本誌は、空洞化悪玉論の理由である「税収が減る」「雇用が守れない」の2つについて、それが本当にそうなのか、検討することにしました。

 企業が海外に拠点を移せば当然、法人税を中心とする税収が減ります。ただし、ここで問題になるのは、ではこのまま日本に居続けることで税収が確保できるかという点です。

 日本でモノを作り続けることで企業が国際競争力を失いつぶれてしまえば、同じように税収は失われます。反対に海外に出ることで競争力を回復して儲けるようになれば、企業は利益を配当などの形で日本に還元します。それは法人税という形で国庫に入ることなく、純粋な民間資金として研究開発や設備投資などに使われるはずです。

 同じことは雇用についても言えます。企業がつぶれてしまっては、雇用は失われます。逆に海外に出れば、企業は日本人社員を派遣したりする必要があります。そこである程度の雇用は守れるのです。

 ただし条件があります。中国や東南アジアの学生は極めて優秀です。日本の大企業も最近は、そうした優秀な学生を何とか採用しようと躍起です。もし、日本人の雇用を守ろうとするなら、日本人社員もアジアの優秀な人材と同様の能力を持つ必要があります。グローバルで通用する人材です。もちろん、それには教育が必要ですから、時間はかかります。

 人口の減少が確実な日本は、経済規模を拡大することが難しい状況にあります。逆にアジアを中心とした新興国経済は伸び盛りです。新興国に積極的に進出し、企業が稼ぎを最大化する。そうすればカネもヒトも守れる。空洞化を悲嘆するのではなく、「企業の未来がそこにある」、そう考えることが重要ではないでしょうか。日本企業も日本人も外に出よう。そんなメッセージを込めた特集です。ご一読ください。

(日経ビジネス 2011年9月5日号より)



【ブログ内関連記事】
●とどめ刺された・壊滅だ…超円高に町工場悲鳴 (読売新聞)
http://sociologio.at.webry.info/201108/article_72.html
●中国で基幹部品の生産検討=海外初、コスト削減へ―トヨタ (時事通信社)ほか
http://sociologio.at.webry.info/201109/article_8.html
●東日本大震災の影響で、全体の5割強が「雨もよう」(帝国データバンク)
http://sociologio.at.webry.info/201108/article_96.html
●米国の陰謀なのか あらかじめ仕組まれていた世界同時株安(日刊ゲンダイ)ほか
http://sociologio.at.webry.info/201108/article_33.html
●世界の環境ホットニュース[GEN] 788号:無「計画停電」決定までの舞台裏(2)
http://sociologio.at.webry.info/201103/article_66.html

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ましこ
2011年09月29日 12:42
パナ、リチウムイオン電池の国内拠点半減 中国で5割生産へ
産経新聞 9月29日(木)10時29分配信

 パナソニックがパソコンや携帯電話などに使う民生用リチウムイオン電池のグループの国内生産拠点を、2012年度末までに現在の8工場から4工場に半減させることが29日、分かった。生産を継続する住之江工場(大阪市住之江区)の増産計画も凍結。国内生産を縮小する一方、今後は中国での生産比率を現在の1~2割から5割程度に拡大して、コスト競争力を高める。

 同社は京都工場(京都市南区)を閉鎖するほか、和歌山工場(和歌山県紀の川市)では基幹部品以外の生産を中止する。守口工場(大阪府守口市)と洲本工場(兵庫県洲本市)はすでに民生用リチウムイオン電池の生産を停止。守口は研究開発に特化し、洲本は自動車に搭載するニッケル水素電池を生産する。

 住之江工場は1期、2期工事の合計で1千億円の投資を計画していたが、2期工事は中止。関西電力から借りていた用地は返還する方向で交渉に入る。今後、国内工場では民生用のリチウムイオン電池よりも付加価値の高いハイブリッド車(HV)向けなどの生産比率を高める。

 一方、中国で3カ所目となる新工場を来年4月に江蘇省蘇州市に完成させる予定。中国の既存工場でも生産能力を拡大している。現地の安価な部材を活用するなどでコスト競争力を高め、サムスングループなどライバルの韓国勢が急速にシェアを伸ばしていることに対抗する。

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