世界の環境ホットニュース[GEN823] 豚インフルエンザ報道を検証する(44)

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     世界の環境ホットニュース[GEN] 823号 11年10月1日
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          豚インフルエンザ報道を検証する(44)
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第44回 鹿児島県出水市の高病原性鳥インフルエンザは意図的誤診?
原田和明

なぜ文化庁がツルの殺処分に加担するのでしょうか? 天然記念物であるナベ
ヅルの「H5N1亜型」感染は高病原性鳥インフルエンザの恐怖を煽っている厚労
省には都合が悪かったはずです。天然記念物だから殺処分できない、推移を見
守ることになる。すると感染は広がらず、「H5N1亜型」が高病原性でないので
は?と考える者がでてくるかもしれない・・。「天然記念物」を解除する手続
きには時間がかかりすぎる。騒ぎを煽ったものの、証拠隠滅ができないという
墓穴を掘ったことに後で気付いたのでしょう。

その場しのぎの策として、文化庁の協力を得て、渋谷市長へのささやき作戦が
採用され、「善意の第三者」江戸謙顕はわざわざそのことを伝えるために鹿児
島まで出向いたと考えられます。

しかし、渋谷市長は誘惑に乗らなかった。そして、殺処分を回避した鹿児島県
出水市のナベヅルで感染が広がった形跡はありません。そもそも殺す必要のな
い動物を、誰から命令されたわけでもないのに、「苦渋の決断」で皆殺しにす
る。雰囲気というか風潮というか実態のないものに押しつぶされていくような
イヤな気分になります。口蹄疫では憲法遵守の立場をとった鳩山首相、赤松農
相に罵声が浴びせられ、鳥インフルエンザでは法律を守らなくてよいと一介の
小役人が呟く。

なお、鹿児島県出水市では 1月26日に養鶏農場の鶏が高病原性鳥インフルエン
ザに感染していたことが確認され、県はこの農場の約8600羽すべてを殺処分し
ていますが(東京新聞2011年1月26日 13時30分)、鹿児島大学・岡本嘉六教授
は「ナベヅルの死亡事例と今回の出水市の採卵農場を結びつけるには間隔が空
きすぎている」(岡本教授のHP)としており、因果関係はないと考えられます。


ところで、鹿児島県出水市のナベヅルに感染が拡大しなかったことは、「H5N1
亜型」が高病原性でないことの証拠にならないかもしれません。鳥取大学の誤
診、つまり2羽のナベヅルから「H5N1亜型」ウイルス検出という発表 自体が間
違いだった可能性があるのです。

鹿児島県 出水市のナベヅルに ついては、環境省が ツル類等の糞240サンプル
(12月25~27日に1197個の糞を採取)からは、高病原性を含む鳥インフルエン
ザウイルスは検出されなかったことを公表しています。ナベヅルの一部が鳥イ
ンフルエンザに感染しているという証拠は見つからなかったのです。この結果
について、環境省は「今回の検査について、環境省としては、現地周辺の野鳥
の感染状況は高密度ではないとの認識です」と説明していますが、この説明は
間違っています。感染していない(鳥取大学の分析結果が間違っていた)可能
性があり、追加実験が不可欠です。

フンからのウイルスの検出率と鳥の病状との関連や、鳥の種類やウイルスの種
類でその傾向に違いがあるのかと云った調査は危機管理上重要なデータである
はずですが、環境省も農水省も関心は薄いようです。

「放置すれば感染が広がり、必ず死んでしまう」という認識が一部にあって、
地方自治体の首長が法律で決められたわけでもない殺処分を決断してしまうよ
うな状況なのですから、環境省はナベヅルの北帰行が終わるまで追跡調査をし
て、感染が拡大しつつあるのかどうか監視しなければならないのではないかと
思うのです。しかし、環境省のHPには鹿児島県出水市のナベヅルに関する追加
情報はありません。フンの分析は一回ポッキリで終わっているのです。なぜ環
境省は鹿児島県出水市のナベヅルにこんなにも無関心なのでしょうか?

環境省も高病原性鳥インフルエンザの欺瞞を知っているのではないしょうか?
渋谷俊彦・出水市長が文化財調査官の誘いに乗らなかった時点で、矛盾が露呈
するナベヅルの話題はもう避けたい心境だったのでしょうか?

そもそも、通常どの程度の鳥インフルエンザが糞から検出されるものなのかと
いう情報が欠落しているから、「0」という測定結果を評価できないのですが、
そのデータは存在するのです。川岡義裕「インフルエンザ危機」(集英社新書
2005年10月)によると、北海道大学と鳥取大学で毎年フンからインフルエンザ
ウイルスを分離する調査研究が継続されており、通常でも検出率が 1%程度で
あったことが記されています。

 (以下引用)
 「北大獣医学部の微生物学研究室では渡り鳥からインフルエンザウイルスを
 分離する試みも 行われていた。札幌から 北海道の最北端に近い浜頓別まで
 でかけ、一週間から二週間交替で合宿しながら渡り鳥のフンや血液を採取す
 る作業である。渡り鳥の捕獲は野鳥の会の人たちが協力してくれた。まず彼
 らが網で鳥を捕まえる。私たちは彼らが捕まえた鳥のお尻に綿棒を入れて排
 泄口周辺の細胞やフンを採ったり、血液を採取するのだ。(中略)肝心のウ
 イルス分離は1%ほどだった。100羽分のフンを集めてもウイルスが含まれる
 のはたったの一羽という結果であった。」(p59-60)

 「鳥取大学の場合、ウイルスハンティングの場所は、鳥取の海辺や川そして
 宍道湖だった。北大のように鳥を捕まえて尻から糞を採取するのではなく、
 湖周辺に落ちている糞を綿棒ですくい取る。(中略)鳥取大学では毎年冬の
 間に3000ほどの検体を集め、フリーザーに入れ保存していた。この検体を翌
 春から秋の半年にかけて実験をしていたのだが、分離率は 平均1%。北海道
 大学での実験とほぼ同じ確率だった。」(p66-67)
 (引用終わり)

通常でも鳥インフルエンザウイルスは1%程度見つかるという状況で、240サン
プル中に高病原性ではない鳥インフルエンザウイルスも検出されなかったとい
うのはどういうことでしょうか? 出水市のナベヅルは高病原性鳥インフルエ
ンザどころか、通常の鳥インフルエンザウイルスにも感染していない(感染し
ていても確率は通常の 1/3以下)という可能性を示唆するものであり、死んだ
2羽から高病原性鳥インフルエンザ ウイルスが検出されたという結果との整合
性がとれていないことを示しています。鳥取大学の遺伝子検査の信頼性に関わ
る問題でもあります。

出水市のナベヅルでは、簡易検査と遺伝子検査(詳細分析)の結果がかなり異
なっています。

 12月21日 簡易検査(+) → 遺伝子検査(+)
 12月24日 簡易検査(-) → 遺伝子検査(+)
  その後 簡易検査(+)3 → 遺伝子検査(-)3
      簡易検査(-)7 → 遺伝子検査(-)7
  簡易検査と遺伝子検査(詳細分析)の不整合率は4/12=33%にも達します。

「環境省鳥獣保護業務室は『過去にも簡易検査と詳細分析が異なったケースは
あり、結果が逆転してもおかしくはない』と説明している」(読売新聞2010年
12月24日)遺伝子検査は詳細分析だから正確だと言えるわけではなかったので
す。詳細な分だけ操作も煩雑で、不純物の混入、実験者の操作ミスなど結果の
正確性を阻害する要因も増えてくるのでしょう。

「今回の検査について、環境省としては、現地周辺の野鳥の感染状況は高密度
ではないとの認識です」程度の説明でお茶を濁していい問題ではありません。
鹿児島県出水市のナベヅルの感染は鳥取大学の誤診、あるいは「H5N1亜型」が
高病原性でないとの証拠として重要な意味があります。そして、環境庁と文化
庁まで証拠隠滅や情報操作に一枚かんでいるということになります…。

出水市長がツルの殺処分に踏み切らなかったことから、高病原性鳥インフルエ
ンザはホントは弱毒性だったことがばれてしまったのです。口蹄疫同様、これ
までも一部で感染と治癒を繰り返して集団として免疫を獲得していっていたの
でしょう。その上、そもそも出水市のナベヅルは感染していなかった疑いまで
出てきました。国内で数少ない高病原性鳥インフルエンザの検査機関である鳥
取大学の遺伝子検査の信頼性までもが疑わしいのです。

この原稿をアップする直前、東日本大震災が発生。高病原性鳥インフルエンザ
&2009 豚インフルエンザの でっちあげ疑惑は大震災の混乱の中で忘れ去られ
ようとしています。

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