<ベトナム>日本の原発導入「変えぬ」 副首相表明 (毎日新聞)ほか
<ベトナム>日本の原発導入「変えぬ」 副首相表明
毎日新聞 10月26日(水)2時30分配信
【ハノイ西尾英之、矢野純一】ベトナムのグエン・スアン・フック副首相は25日、ハノイの首相府で毎日新聞の成田淳・東京本社編集編成局長とのインタビューに応じ、ベトナム南部ニントゥアン省に日本の技術で計画している原子力発電所2基の建設について、事実上のゴーサインとなる日本側との政府間合意を締結する方針を初めて明らかにした。ただ、東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の拡散が次々と判明するなど被害状況が不透明な中での原発輸出再開となるだけに、日本国内には抵抗感も強い。
ズン首相が今月30日から訪日し、その際に締結するという。
2基の建設計画を巡っては菅直人首相(当時)が昨年10月に訪越した際、「建設は日本をパートナーとする」基本方針を確認した。3月の東京電力福島第1原発事故後もベトナムは日本の技術導入に積極姿勢を示していたが、政府間の正式な合意はなかった。
ベトナムは基本方針の確認を受け、日本政府に対し安全性が確認されている先端技術の導入、核廃棄物の処理方法など6条件を満たすよう求め、日本側は順次克服してきた。
最後まで残った建設資金の原資となるベトナム政府への低利融資についても、双方が合意に達したとみられ、建設のハードルとなっていたすべての問題が解決したとみられる。
フック副首相は「越日両国は戦略的パートナーシップを結んでいる。(福島の)予想外の事故はあったが、両国の(原発協力に関する)関係に変わりはない」と強調した。
ベトナムは2030年までに原発を8カ所計14基建設、稼働させる計画。うちニントゥアン省には2カ所に2基ずつ建設し、第1期の2基は既にロシアが受注した。今回、21~22年にかけて稼働させる2期分の2基で合意締結の運びとなる。
菅氏訪越時に合意したレアアースの共同開発方針について副首相は「わが国には大量のレアアースが存在する。規模や開発場所、開発方法などについての問題が残っており、長期的な事業として進めたい」と語った。
また、日本の援助による新幹線の建設構想について、国会は昨年「財源の確保が不十分」として承認を見送ったが、副首相は「計画を国会に再提案し、国会の承認を得られれば日本側に伝えたい」との姿勢を示した。
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加については「国内の農業分野に影響を与える問題であり、交渉に参加するか検討している段階」と述べるにとどめた。
フック副首相は政府官房長官を経て今年8月副首相に就任。4人いる副首相の筆頭格で、共産党最高指導部である政治局の局員。今回の取材は、毎日新聞ベトナム訪問団(団長・朝比奈豊社長)の要請に応えた。
<原発輸出>日本国内に抵抗感も 首相は解禁明言せず
毎日新聞 10月26日(水)2時32分配信
ベトナムのグエン・スアン・フック副首相が25日の毎日新聞との会見で明らかにした、原子力発電所建設を巡る最終合意締結の方針は、日本が官民一体で展開してきた原発輸出「第1号」に期待感を示したものだ。ただ、東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の拡散が次々と判明し、被害状況も不透明な中での原発輸出再開となるだけに、日本国内には抵抗感も根強い。
国家レベルで原発を売り込むフランスやロシアへの対抗と、国内の経済不況を背景に、日本は09年6月、産学官一体の「国際原子力協力協議会」を発足させ、オールジャパン体制を整備。10年8月には直嶋正行・経産相(当時)が東京電力や日立製作所のトップと訪越し、トップセールスを展開した。
電力9社などが原発技術売り込み専門の新会社「国際原子力開発」も設立。ベトナムでの受注を最初の目標に据えた菅直人首相(同)は10年10月、ベトナム首相との会談で原発2基建設を受注することで基本合意。このほか、ヨルダン、トルコ、リトアニアでも原発輸出を目指した。
しかし、福島事故で日本国民の間には原発輸出に対する抵抗感が強まり、菅首相が原発輸出政策の見直しを示唆。輸出に必要な原子力協定の国会承認のめどが立たない状況となり、ベトナムとの協議の再開も9月にずれ込んだ。
この間、韓国によるベトナムでの原発受注に向けた動きも取りざたされた。
野田佳彦首相は9月22日の国連原子力安全会合での演説で、原発輸出継続の意向を表明。放射性物質の汚染拡散が深刻視される中で首相発言に批判が続出した。8日後の記者会見では「輸出解禁のような話に受け止められているが、そんなことは一言も言っていない」と反論、政府の方針が曖昧なままとなっている。【和田憲二、西田進一郎、真野森作】
ベトナム:フック副首相との会見要旨
毎日新聞ベトナム訪問団(団長・朝比奈豊社長)と、ベトナムのグエン・スアン・フック副首相の会見内容は次の通り。
▽原子力発電所建設
両国は戦略的パートナーシップを結んでおり、福島第1原子力発電所の事故で両国関係には変わりはない。この事業は両国にとって重要で、ズン首相の訪日では、原子力発電所建設について政府間で合意することになると思う。原発建設の方針は変更せず、原子力の平和目的の利用の方針も変わっていない。
▽レアアースの共同開発
共同開発は両国政府にとって長期的な事業だ。ベトナムのレアアースの埋蔵量は膨大で、今後、開発場所や規模、開発の方法などについて、効率の高い方法を協議して進めたい。
▽新幹線建設計画
効率的なものにするため科学的に実現可能性を検討しており、その内容を国会に提出し、国会が承認した場合には、その結果を日本に伝えたい。
▽TPP参加
国内の農業分野への影響は微妙な問題で、交渉参加については検討中だ。農業への影響と、国民にどのような利益があるかについて検討する。
▽周辺国との領海問題
ベトナムの地理的特徴から、他国との衝突は避けられないと思う。我が国の原則は国連海洋法条約と、東南アジア諸国連合(ASEAN)で結んだ、南シナ海の領有権を平和的に解決することを定めた行動宣言に基づき、問題を解決する。衝突が起きれば、まず、平和的、友好的に交渉に臨み、周辺国との平和と安定を図る。
▽日本企業の進出と賃金の上昇
我が国に進出した日系企業の98%が成功していると聞いている。前官房長官として、進出企業の問題を取り除く努力をしてきた。特に日本が強みを持っている機械、IT、サービス業分野への投資を呼びかけたい。両国、企業、労働者の3者に利益がある制度作りを進める。
▽日本の震災
日本政府の指導のもとでの復興への国民の強い志に感動した。
▽世界のお巡りさんコンサート
両国関係に有意義で、イベントの成功を高く評価する。
毎日新聞 2011年10月26日 2時30分(最終更新 10月26日 3時40分)
【ブログ内関連記事】
●原発輸出:方針変えず トルコなど継続…政府見解(毎日)
http://sociologio.at.webry.info/201108/article_15.html
●核処分場 モンゴルに計画…日米、昨秋から交渉(毎日新聞)ほか
http://sociologio.at.webry.info/201105/article_41.html
毎日新聞 10月26日(水)2時30分配信
【ハノイ西尾英之、矢野純一】ベトナムのグエン・スアン・フック副首相は25日、ハノイの首相府で毎日新聞の成田淳・東京本社編集編成局長とのインタビューに応じ、ベトナム南部ニントゥアン省に日本の技術で計画している原子力発電所2基の建設について、事実上のゴーサインとなる日本側との政府間合意を締結する方針を初めて明らかにした。ただ、東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の拡散が次々と判明するなど被害状況が不透明な中での原発輸出再開となるだけに、日本国内には抵抗感も強い。
ズン首相が今月30日から訪日し、その際に締結するという。
2基の建設計画を巡っては菅直人首相(当時)が昨年10月に訪越した際、「建設は日本をパートナーとする」基本方針を確認した。3月の東京電力福島第1原発事故後もベトナムは日本の技術導入に積極姿勢を示していたが、政府間の正式な合意はなかった。
ベトナムは基本方針の確認を受け、日本政府に対し安全性が確認されている先端技術の導入、核廃棄物の処理方法など6条件を満たすよう求め、日本側は順次克服してきた。
最後まで残った建設資金の原資となるベトナム政府への低利融資についても、双方が合意に達したとみられ、建設のハードルとなっていたすべての問題が解決したとみられる。
フック副首相は「越日両国は戦略的パートナーシップを結んでいる。(福島の)予想外の事故はあったが、両国の(原発協力に関する)関係に変わりはない」と強調した。
ベトナムは2030年までに原発を8カ所計14基建設、稼働させる計画。うちニントゥアン省には2カ所に2基ずつ建設し、第1期の2基は既にロシアが受注した。今回、21~22年にかけて稼働させる2期分の2基で合意締結の運びとなる。
菅氏訪越時に合意したレアアースの共同開発方針について副首相は「わが国には大量のレアアースが存在する。規模や開発場所、開発方法などについての問題が残っており、長期的な事業として進めたい」と語った。
また、日本の援助による新幹線の建設構想について、国会は昨年「財源の確保が不十分」として承認を見送ったが、副首相は「計画を国会に再提案し、国会の承認を得られれば日本側に伝えたい」との姿勢を示した。
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加については「国内の農業分野に影響を与える問題であり、交渉に参加するか検討している段階」と述べるにとどめた。
フック副首相は政府官房長官を経て今年8月副首相に就任。4人いる副首相の筆頭格で、共産党最高指導部である政治局の局員。今回の取材は、毎日新聞ベトナム訪問団(団長・朝比奈豊社長)の要請に応えた。
<原発輸出>日本国内に抵抗感も 首相は解禁明言せず
毎日新聞 10月26日(水)2時32分配信
ベトナムのグエン・スアン・フック副首相が25日の毎日新聞との会見で明らかにした、原子力発電所建設を巡る最終合意締結の方針は、日本が官民一体で展開してきた原発輸出「第1号」に期待感を示したものだ。ただ、東京電力福島第1原発事故に伴う放射性物質の拡散が次々と判明し、被害状況も不透明な中での原発輸出再開となるだけに、日本国内には抵抗感も根強い。
国家レベルで原発を売り込むフランスやロシアへの対抗と、国内の経済不況を背景に、日本は09年6月、産学官一体の「国際原子力協力協議会」を発足させ、オールジャパン体制を整備。10年8月には直嶋正行・経産相(当時)が東京電力や日立製作所のトップと訪越し、トップセールスを展開した。
電力9社などが原発技術売り込み専門の新会社「国際原子力開発」も設立。ベトナムでの受注を最初の目標に据えた菅直人首相(同)は10年10月、ベトナム首相との会談で原発2基建設を受注することで基本合意。このほか、ヨルダン、トルコ、リトアニアでも原発輸出を目指した。
しかし、福島事故で日本国民の間には原発輸出に対する抵抗感が強まり、菅首相が原発輸出政策の見直しを示唆。輸出に必要な原子力協定の国会承認のめどが立たない状況となり、ベトナムとの協議の再開も9月にずれ込んだ。
この間、韓国によるベトナムでの原発受注に向けた動きも取りざたされた。
野田佳彦首相は9月22日の国連原子力安全会合での演説で、原発輸出継続の意向を表明。放射性物質の汚染拡散が深刻視される中で首相発言に批判が続出した。8日後の記者会見では「輸出解禁のような話に受け止められているが、そんなことは一言も言っていない」と反論、政府の方針が曖昧なままとなっている。【和田憲二、西田進一郎、真野森作】
ベトナム:フック副首相との会見要旨
毎日新聞ベトナム訪問団(団長・朝比奈豊社長)と、ベトナムのグエン・スアン・フック副首相の会見内容は次の通り。
▽原子力発電所建設
両国は戦略的パートナーシップを結んでおり、福島第1原子力発電所の事故で両国関係には変わりはない。この事業は両国にとって重要で、ズン首相の訪日では、原子力発電所建設について政府間で合意することになると思う。原発建設の方針は変更せず、原子力の平和目的の利用の方針も変わっていない。
▽レアアースの共同開発
共同開発は両国政府にとって長期的な事業だ。ベトナムのレアアースの埋蔵量は膨大で、今後、開発場所や規模、開発の方法などについて、効率の高い方法を協議して進めたい。
▽新幹線建設計画
効率的なものにするため科学的に実現可能性を検討しており、その内容を国会に提出し、国会が承認した場合には、その結果を日本に伝えたい。
▽TPP参加
国内の農業分野への影響は微妙な問題で、交渉参加については検討中だ。農業への影響と、国民にどのような利益があるかについて検討する。
▽周辺国との領海問題
ベトナムの地理的特徴から、他国との衝突は避けられないと思う。我が国の原則は国連海洋法条約と、東南アジア諸国連合(ASEAN)で結んだ、南シナ海の領有権を平和的に解決することを定めた行動宣言に基づき、問題を解決する。衝突が起きれば、まず、平和的、友好的に交渉に臨み、周辺国との平和と安定を図る。
▽日本企業の進出と賃金の上昇
我が国に進出した日系企業の98%が成功していると聞いている。前官房長官として、進出企業の問題を取り除く努力をしてきた。特に日本が強みを持っている機械、IT、サービス業分野への投資を呼びかけたい。両国、企業、労働者の3者に利益がある制度作りを進める。
▽日本の震災
日本政府の指導のもとでの復興への国民の強い志に感動した。
▽世界のお巡りさんコンサート
両国関係に有意義で、イベントの成功を高く評価する。
毎日新聞 2011年10月26日 2時30分(最終更新 10月26日 3時40分)
【ブログ内関連記事】
●原発輸出:方針変えず トルコなど継続…政府見解(毎日)
http://sociologio.at.webry.info/201108/article_15.html
●核処分場 モンゴルに計画…日米、昨秋から交渉(毎日新聞)ほか
http://sociologio.at.webry.info/201105/article_41.html
この記事へのコメント
毎日新聞 11月1日(火)8時43分配信
野田佳彦首相は31日、ベトナムのグエン・タン・ズン首相と首相官邸で会談した。両首相は会談後の共同記者会見で、日本が受注した原子力発電所2基の建設継続や、レアアース(希土類)の共同開発を進めていく方針を確認する共同声明を発表した。
野田首相は会談で「東京電力福島第1原発事故の経験と教訓を共有しつつ、ベトナム政府の意向も踏まえ、高い水準の原子力安全が実現されるよう引き続き協力する」と述べた。ズン首相は会談後の共同記者会見で「日本はベトナムの最も重要な経済パートナー。原発の建設やレアアースについて進めていく」と述べた。
両国政府は東日本大震災前の昨年10月の首脳会談で、原発2基の建設を日本が受注することで大筋合意していた。今回は福島第1原発事故を踏まえても、原発の輸出を継続する日本政府の方針を改めて示したものだ。16年に建設に着手し、21年の稼働を目指す。
共同声明では、日本側が事故の教訓を踏まえた原発の安全性向上を確約した。日本政府は今後、原発輸出の前提となるベトナムとの原子力協定の国会承認を急ぐ。【坂口裕彦】