もともと孤立していた 単なる破壊的クレーマーが、ウェブ上の暴力集団と化す構図
小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明
2011年8月19日(金)
彼らが「抗議」を受け入れた理由
バックナンバー
……
ツイッターには、今日も様々なデマが飛び交っている。
だからツイッターがいけないと言っているのではない。
デマを打ち消す情報を広めているのもやはりツイッターだ。
その意味で、ツイッターは関わる人間が、きちんと向き合ってさえいれば、有用なツールであるはずなのだ。
とはいえ、ネットメディアには固有の落とし穴がある。
昔から言われていることだが、ネット上の情報は、テレビや新聞のような既存のマスメディア発の情報と比べて、自由度が高い。
まず、双方向性を備えている。多様性も確保されている。それに、マスメディアの情報が一方的であるのとは違って、ネット上に偏在する情報は、受け手の側が、自分のほしい部分だけを選んで、自由にアクセスすることができる。この点が最も大きな違いだ。
良いことずくめに見える。
実際、良い面はたくさんある。
が、長所は短所を含んでいる。
情報収集において選択の自由が確保されていることは、普通に考えると、情報源の偏向を防ぐ効果を発揮しそうに思える。が、実際のところ、人々は、結局、自分にとって心地よい情報だけを集めるようになる。結果、情報にはバイアスがかかる。
特に頑迷な人々は、認知的不協和をもたらさない情報(偏見を補強する情報)だけを選択的に収集する。
と、偏見はいやがうえにも補強される。当然だ。
ツイッターでも同じことが起こる。自分と反対の考えを持った人々をフォロワーから外し、不快なメンションをもたらす人間をブロックしているうちに、いつしか、タイムラインは、自分と似た考えの持ち主で占められることになる。
狷介であったり偏奇であったりする人々の場合、その傾向はより強烈になる。特定の民族を排除する考えを抱いている人々は、お互いをフォローし合うことで情報交換をはかる。反対側の立場の人々もまた、反対側の論陣を補強するためにスクラムを組む。と、ツイッターの広い世界の中には、思いもよらないタコツボのような小宇宙が、無数に形成されることになる。疑似科学、ホメオパシー医療、カルト宗教、政治セクト、ネオナチ、オカルト妄想、幼児性愛、自家製乳酸菌による放射線浄化……といった、リアルな社会の中ではほとんどまったく仲間を見つけることのできないマイノリティーが、ツイッターのコミュニティーの中では、会話を交わし、友情を育て、偏見を助長し合って、行動の牙を研ぐことになる。こういうことを言うと、ネット規制を画策している政治家みたいな人たちが喜びそうで嫌なのだが、事実は事実だ。現実に、SNSはマイノリティを糾合する磁石のようなメディアとして機能しはじめている。
陸前高田市の被災松を焚くかどうかで二転三転した京都の「五山送り火」の騒動も、「保存会」への抗議が発端だった。
思うに、この種の「抗議」を活性化させる上で、ネットメディアは、有効な足場を提供したはずだ。
どこの町にも神経質な人間はいる。不寛容な隣人やモンスター市民のたぐいも、当然一定の割合で居住している。
で、ネットメディアが普及してからこっち、この種のクレーマーが、団結の場を持ち始めている気がするのだ。
クレーマーは元来団結できる人々ではない。狷介で人を寄せ付けないからこそクレーマーをやっているわけで、そうである以上、クレーマーは他のクレーマーにとっても厄介な人格であるはずだからだ。
しかしながら、SNSのユルい結合や、ネット掲示板のご都合主義なパートタイム団結ユニオンは、基本的には単独行動者である彼らに、絶好な連帯の足場を提供する。
と、スタンドアローンだったプロテストたちは、連絡を取り合い、お互いを勇気づけ、集団心理を獲得することによって、より強力な圧力団体に成長して行く。
「五山送り火」の「保存会」に電話をしてきた人々が、どんな言葉で抗議の意思を伝えてきたのか、私は、具体的なやりとりを知っているわけではない。
が、「保存会」の人々が抗議を受け入れた理由については、ほぼ想像できる。
要するに彼らは「面倒くさかった」のである。
抗議してくる人間の話を聞いたり、彼らを説得したり、会見の場を設けたり、自治体の人間に報告をしたり、然るべきスジの人々の判断を仰ぐために根回しをすることが面倒で、だから、彼らはさっさと抗議を受け入れることにしたのである。
五山送り火の問題がゴタゴタしている間に起こった「まんべくん」による不規則発言問題の経緯もおおよそ似たような経過をたどったのだろうと私は考えている。
……
------------------【引用おわり】------------------
Google「小田嶋隆」
●【紹介】京都府と岩手県陸前高田の送り火偏向報道問題まとめwiki
http://sociologio.at.webry.info/201108/article_41.html
●「やらせメール」と人を無能にする組織( 小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」)
http://sociologio.at.webry.info/201107/article_58.html
2011年8月19日(金)
彼らが「抗議」を受け入れた理由
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……
ツイッターには、今日も様々なデマが飛び交っている。
だからツイッターがいけないと言っているのではない。
デマを打ち消す情報を広めているのもやはりツイッターだ。
その意味で、ツイッターは関わる人間が、きちんと向き合ってさえいれば、有用なツールであるはずなのだ。
とはいえ、ネットメディアには固有の落とし穴がある。
昔から言われていることだが、ネット上の情報は、テレビや新聞のような既存のマスメディア発の情報と比べて、自由度が高い。
まず、双方向性を備えている。多様性も確保されている。それに、マスメディアの情報が一方的であるのとは違って、ネット上に偏在する情報は、受け手の側が、自分のほしい部分だけを選んで、自由にアクセスすることができる。この点が最も大きな違いだ。
良いことずくめに見える。
実際、良い面はたくさんある。
が、長所は短所を含んでいる。
情報収集において選択の自由が確保されていることは、普通に考えると、情報源の偏向を防ぐ効果を発揮しそうに思える。が、実際のところ、人々は、結局、自分にとって心地よい情報だけを集めるようになる。結果、情報にはバイアスがかかる。
特に頑迷な人々は、認知的不協和をもたらさない情報(偏見を補強する情報)だけを選択的に収集する。
と、偏見はいやがうえにも補強される。当然だ。
ツイッターでも同じことが起こる。自分と反対の考えを持った人々をフォロワーから外し、不快なメンションをもたらす人間をブロックしているうちに、いつしか、タイムラインは、自分と似た考えの持ち主で占められることになる。
狷介であったり偏奇であったりする人々の場合、その傾向はより強烈になる。特定の民族を排除する考えを抱いている人々は、お互いをフォローし合うことで情報交換をはかる。反対側の立場の人々もまた、反対側の論陣を補強するためにスクラムを組む。と、ツイッターの広い世界の中には、思いもよらないタコツボのような小宇宙が、無数に形成されることになる。疑似科学、ホメオパシー医療、カルト宗教、政治セクト、ネオナチ、オカルト妄想、幼児性愛、自家製乳酸菌による放射線浄化……といった、リアルな社会の中ではほとんどまったく仲間を見つけることのできないマイノリティーが、ツイッターのコミュニティーの中では、会話を交わし、友情を育て、偏見を助長し合って、行動の牙を研ぐことになる。こういうことを言うと、ネット規制を画策している政治家みたいな人たちが喜びそうで嫌なのだが、事実は事実だ。現実に、SNSはマイノリティを糾合する磁石のようなメディアとして機能しはじめている。
陸前高田市の被災松を焚くかどうかで二転三転した京都の「五山送り火」の騒動も、「保存会」への抗議が発端だった。
思うに、この種の「抗議」を活性化させる上で、ネットメディアは、有効な足場を提供したはずだ。
どこの町にも神経質な人間はいる。不寛容な隣人やモンスター市民のたぐいも、当然一定の割合で居住している。
で、ネットメディアが普及してからこっち、この種のクレーマーが、団結の場を持ち始めている気がするのだ。
クレーマーは元来団結できる人々ではない。狷介で人を寄せ付けないからこそクレーマーをやっているわけで、そうである以上、クレーマーは他のクレーマーにとっても厄介な人格であるはずだからだ。
しかしながら、SNSのユルい結合や、ネット掲示板のご都合主義なパートタイム団結ユニオンは、基本的には単独行動者である彼らに、絶好な連帯の足場を提供する。
と、スタンドアローンだったプロテストたちは、連絡を取り合い、お互いを勇気づけ、集団心理を獲得することによって、より強力な圧力団体に成長して行く。
「五山送り火」の「保存会」に電話をしてきた人々が、どんな言葉で抗議の意思を伝えてきたのか、私は、具体的なやりとりを知っているわけではない。
が、「保存会」の人々が抗議を受け入れた理由については、ほぼ想像できる。
要するに彼らは「面倒くさかった」のである。
抗議してくる人間の話を聞いたり、彼らを説得したり、会見の場を設けたり、自治体の人間に報告をしたり、然るべきスジの人々の判断を仰ぐために根回しをすることが面倒で、だから、彼らはさっさと抗議を受け入れることにしたのである。
五山送り火の問題がゴタゴタしている間に起こった「まんべくん」による不規則発言問題の経緯もおおよそ似たような経過をたどったのだろうと私は考えている。
……
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Google「小田嶋隆」
●【紹介】京都府と岩手県陸前高田の送り火偏向報道問題まとめwiki
http://sociologio.at.webry.info/201108/article_41.html
●「やらせメール」と人を無能にする組織( 小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」)
http://sociologio.at.webry.info/201107/article_58.html
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